大学時代からの親友が訪ねてきた。
開講準備のピアノ教室。彼女の叶えたいことのひとつに 「2台のピアノでのアンサンブルをする」ことがあるそうだ。既に永きにわたり彼女と共にあるグランドピアノのレッスン室に もう1台、ピアノを迎えたい、と探している。その願いの彼女につき添い ピアノ工房へと足を運んだ。
工房には所狭しに 沢山のピアノが並んでいた。1台1台に 特徴がある。内に溜めて 最大値を予想させ出し尽くさない可能性の広がりを含んだ音色のもの。逆に 与えられた響きを とっておかないで出しきる性質のもの。
その1台1台に座り 試弾する。シューベルトのアンプロンプチュや スカルラッティーのソナタ、ショパンの黒鍵や3度のエチュード、きらきらぼし変奏曲、トルコマーチ、よろこびの島、ガーシュウィンのラプソディインブルー。
88鍵すべての 音色を聴くべく すべてを打鍵し奏でる。それぞれの楽器で同じ曲を弾き パタッと弾く手を離しては 瞬間 こころで感じたことを 反芻する。
ああ 懐かしい。
18の歳 富山から上京し 東京音大に通い始め まだまもない頃、ホールでの公開レッスンを受けていた彼女の演奏に衝撃を受けたことを懐かしく思い出された。
彼女の演奏は 呼吸も 思いも 過去も現在も未来もすべてが 音と一致してほとばり出されていく。
火花のように 輝くパッション。
今なお 輝きはかわらない。
と、 新しく入会した 6年生女子生徒の 語ったことが 同時にわたしの胸に飛び込んできた。
「心のなかに 住んでいました。」
弾きたかった曲。
幻想即興曲と乙女の祈り。
「ずっと心のなかに 住んでいました。
その曲を始めることが出来て幸せです。」
「そして、以前弾いた曲を またレッスンで弾き 深めていけることが うれしいです。」
週の半ば 水曜日。
今朝も いつものように かわらず弾きはじめる。
しずまり 聴き浸り 弾き紡ぐ。
「こころの中に住んでいました。」
月曜日 工房から我が家に移動し、おひるごはんを食べながら 親友がおもむろに話した内容が やさしく浮かんできた。
やえこ、わたしはね。音楽は天から与えられたこの世とは違う特別な贈り物だと思っているの。
そしてね。すべての人は深いところで繋がっていると思うの。それは 今存在している人だけではなく、ショパンやラヴェルなどの作曲家 過去の人々もね。その すべてのすべてと見えないところで 繋がって ひとつであることに、今の世代は気づき 意味と価値を持ち始めているのだと思う。音楽は そのことに気づかせてくれる贈り物。
ことばの使い方は正確ではないかもしれない。しかし、彼女が話した言葉の深みが 私に響いている。
「こころの中に住んでいた。」
その「住んでいた曲達」は 少女が弾く時を待っていたのだろうか。
その「時」が巡り来て動きはじめる。深みから深みへと誘われながら弾き紡ぎ 繋がっていく。作曲家と。空間と。ともに 生きる人たちと。
親友と過ごす時間は時を越える。
響きあい わかりあい 言葉のないところで 信頼し尊敬し 各々を尊重しあう関係も また、
「天から与えられられたこの世とは違う特別な贈り物」だと 感謝に満たされた。
さて、彼女に迎えいれられるのは どんなピアノだろう。
ただ今満員御礼ですが通いたい!と思われる方に通ってほしいという願いはいつも持っています。ご希望があれば在籍生の時間を調整し1枠可能です。
指導者の方の指導もさせて頂いております。詳しくは直接ご連絡ください。
コメントをお書きください