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大学生の生徒さんとの対話

大学生の生徒さんとのレッスンにて



ねえ、

今 曲のスピードを上げるべく
曲に向き合っているでしょう。


ちょっと
考えてみてね。


シューベルトは
真っ白な  五線紙に
なぜ  
この曲を書こうと思ったのかな。


時間もエネルギーも かけて
書く必要があったのかな。


あなたは
この曲を どう感じている?



シューベルトが
感じたまま
そのままを
ありのままに  
あらわしている曲だと感じます。





ほんとうに。
ほんとうに   そうね。




そのなかでも
この段。

泣いているように  感じない?




あっ、そうですね。



その 泣いている 部分を
「悲しい感じ」
と少し感じて
さらっと弾くのか。

いえ、
弾きにくいけれど 
弾けるようになってきた、
と思って弾くのか。





かたや、

「なぜ 悲しいの。
    その理由を
    知りたいの。
    どうか 私がわかるように
    知らせてください。」

と、
シューベルトの魂に
耳を澄まし
音から
聞こうとして
ひびきあいたい、と願って
その場所に向き合うのか。





その音
その場所への
わたし在り方で
音色は
かわると思うの。





たくさん
その場所を
片手ずつ  弾いてもらい

わたしも
弾いてみせながら
どんな 願いが 
音と音の連鎖から わかるか、
を  伝え


また  弾いてもらう。




1時間のレッスンの後に



わたしは 
ゆっくり 
彼女に尋ねた。


今日のレッスンで
気づけたこと を
まとめると...
話してみてくれる?

ことば を 選びながら ゆっくり 語り出す



目標は
高いところに
あるのではなく

曲の  鼓動じたいが
そばにある。


以外に
簡単なことかもしれない。


だから

自分の とらわれ

「テンポが あがらないな、
   とか
   指が  固まるな、などの思い」

うち破って

曲の脈打ちと
わたしの脈打ちを

ひとつになる思いで
集中し
弾いてこうと思います。






いい演奏は
自分が作り出すのでは
ないように 思う。


シューベルトの作品そのものに
いい
がある。

シューベルトの魂に
いい
がある。






彼女との
分かち合いで


シューベルトの 魂が
安らぎ

また
彼女とわたしの 魂も
安らいだように 感じた。


ひびきあう。



シューベルトの即興曲作品90の2。


32歳で 天に還った
その 魂の ほとばしりが
伝わってくる。



天から
シューベルトは

この  対話を
聞いているかな。


聞かれたときに
シューベルトの魂が
安らぎをおぼえる


そんな 
曲への
向き合い方を していきたい。

そんな演奏で   ありたい。